ひとり親家庭の相対的貧困率が48.3%にのぼり(2019年:厚生労働省による国民生活基礎調査)コロナ禍の長期化に加え急激な物価高で特に厳しい生活を余儀なくされているのが母子世帯、困り果てているひとり親家庭は増加傾向にあります。

NPO法人えんまるでは、2020年8月より長野市の困窮・孤立するひとり親支援の取り組みとして、食材等のお届けでひとり親家庭の食を守りながら、関係性を築く「こども宅食えんまる便」の活動をおこなっています。

昨年4月につづき、ひとり親家庭の生活状況を確認するために、先月2月にこども宅食えんまる便の利用家庭にアンケート調査をおこないました。

「こども宅食えんまる便アンケート概要」

実施期間:2023年2月

対象者:長野市内、こども宅食えんまる便を利用しているひとり親家庭

実施方法:Webアンケート

回答数:支援世帯60世帯中39世帯

以下、調査結果になります。

①まず最初に、身体(健康)についてお聞きしました。お子さんの身体(健康)に心配な事があると回答した割合は57.5%、親御さんご自身の身体(健康)に心配な事があるとの回答も57.5%でした。自由回答では、お子さんについては24件、お母さんご自身については23件、具体的な心配事を記載いただきました。

②次のお子さんの教育(学習)の設問については、悩んでいる・困っている事があると回答したご家庭は52.5%でした。自由回答では18件の回答があり、お子さんの教育、学習面で悩みを抱えている親御さんがたくさんおられる事が改めてわかりました。

・勉強の難しさがみられるが、なかなか時間を作って一緒にみてあげられない。塾に通わせたいが費用と、送迎の問題から通わせることは困難。

・成績が悪いが、つきっきりで勉強を教える時間や塾に通わせるお金がない。送迎もできない。

・塾とか通わせてあげれてないから学力が心配、今後進学する時に点数が低かったら、
親として何もしてあげれてないと思ってしまう。仕事が忙しく勉強まで見てあげる時間がない。

仕事、家事、育児に加えてこどもの教育。ひとりで全てをこなさざるを得ない、ひとり親家庭の厳しい現状の声が届いています。

③こちらの項目では、コロナ禍の長期化が生活に与えた影響について6問ご回答をいただきました。金銭面について48.2%、気持ち的な部分で68.3%の親御さんが苦しくなった・負担が増加したと回答。

また「総じて、コロナ禍の以前の生活と比較して、全体的な生活はどのように変化しましたか」の問いには、苦しくなった、やや苦しくなった合計が70%になりました。コロナ禍の長期化(+物価高)に伴い、さまざまな困難を抱えるご家庭が、より厳しい状況におかれていることは各種調査でも明らかにされていますが、えんまる便とつながっているご家庭でも同様の結果になっています。

④生活に困った時や子育てに悩んだ時などに利用した地域の支援サービスの利用状況について8問お尋ねしました。

⑤各種支援、それに伴う手続きについてなど、親御さんご自身のお考えを7問お聞きしました。

⑥過去3年間のなかで、新型コロナウイルスの影響以外で、こどものためにしてあげたかったことで、経済的な理由であきらめたものがあったら教えてくださいとの設問では、旅行・レジャーをあきらめた84.6%。塾などの学校外での学習をあきらめた79.4%。習い事や部活動の道具の購入をあきらめた58.9%。自転車やゲーム機(ソフト)の購入をあきらめた64.1%。このような回答があり、家庭の経済格差が子どもの経験、体験の機会格差にそのままつながっていることがわかります。

⑦最後の設問では、「こども宅食えんまる便」を利用する前と比較して、親御さんの気持ちの変化についてお聞きしました。「とてもあてはまる」と「あてはまる」の合計として、生活が楽になった82.5%、家族関係が良くなった60%、生活が前向きに考えれるようになった80%、地域や社会とのつながりが感じられるようになった67.5%。孤独感が解消できた77.5%との回答をいただきました。

自由回答でも支援者の方への感謝の声がたいへん多くあり、ひとりひとりのご支援者の皆さまと一緒に取り組んでいる「こども宅食えんまる便」の活動が、利用家庭の生活の前向きな変化として確実に現れている、と感じています。

コロナの長期化と急激な物価高騰は、特に保証のない非正規雇用の多いひとり親家庭のお母さんがとりわけ影響を受けています。収入が激減する、なくなるという恐れの中、日々の生活とこどもの命を背負っています。親御さんご本人や家族の病気対応や介護を同時に背負っている方も少なくありません。

新型コロナの影響・物価高騰からの回復にはこのような困りごとを抱えているご家庭の対応が不可欠であり、「こども宅食えんまる便」では、今後も支援強化に向けて活動していきます。

合わせて、困っているご家庭が自分たちの生活のすぐ側にいて、そして支援のニーズがわかっていても、支援には簡単にはつながらない現状を踏まえ、

『なぜ支援が届かないのか?』

『なぜ、助けて…つらい…の声が届かないのか?』

『一方でなぜ支援を受けようと思わないのか?』

「こども宅食えんまる便」では、引き続き、社会課題解決の取り組みをひとつひとつ、ていねいにおこなっていきたい考えています。皆さまからの引き続きのお力添えをなにとぞよろしくお願いいたします。