ひとり親家庭の相対的貧困率が48.3%にのぼり(2019年:厚生労働省による国民生活基礎調査)さらに長期化するコロナ禍により、支援を必要としているひとり親家庭は増加傾向にあります。

その中でNPO法人えんまるでは、2020年8月より長野市の困窮・孤立するひとり親支援の取り組みとして、食材等のお届けでひとり親家庭の食を守りながら、関係性を築く「こども宅食えんまる便」の活動をおこなっています。

今回、ひとり親家庭の生活状況を確認するために、2022年4月にこども宅食えんまる便の利用家庭にアンケート調査をおこないました。結果、ひとり親家庭が抱えている課題がより具体的に見えてきました。

「こども宅食えんまる便アンケート概要」

実施期間:2022年4月

対象者:長野市内、こども宅食えんまる便を利用しているひとり親家庭

実施方法:Webアンケート

回答数:支援世帯51世帯中40世帯

以下、調査結果になります。

①まず最初に、身体(健康)についてお聞きしました。お子さんの身体(健康)に心配な事があると回答した割合は47.5%、親御さんご自身の身体(健康)に心配な事があるとの回答は45%でした。自由回答では、それぞれ約20件の具体的な心配事を記載いただきました。

②次にお子さんの教育(学習)の設問については、悩んでいる・困っている事があると回答したご家庭は62.5%でした。自由回答では24件の回答があり、お子さんの教育、学習面で悩みを抱えている親御さんがたくさんいらっしゃる事が改めてわかりました。

・勉強について分からない所、聞かれても教えてあげられない。また仕事が忙しくてゆっくり勉強を教えてあげられない。

・学校の勉強においつけていないが、私が見てあげる時間もない。

・一緒に勉強をしてあげる時間がなかなか持てない。

仕事、家事、育児に加えてこどもの教育。ひとりで全てをこなさざるを得ない、ひとり親家庭の厳しい現状の回答が多数届いています。

③こちらの項目では、新型コロナウイルスやその感染予防策(休園・休校、分散登校)が生活に与えた影響について6問ご回答をいただきました。金銭面について60%、気持ち的な部分で66.3%の親御さんが苦しくなった、負担が増加したと回答。また「総じて、コロナ禍の以前の生活と比較して、全体的な生活はどのように変化しましたか」の問いには、苦しくなった、やや苦しくなった合計が72.5%になりました。新型コロナウイルスの感染拡大・長期化に伴い、さまざまな困難を抱えるご家庭が、より厳しい状況におかれていることは各種調査でも明らかにされていますが、えんまる便とつながっているご家庭でも同様の結果になっています。

④生活に困った時や子育てに悩んだ時などに利用した地域の支援サービスの利用状況についてお尋ねしました。行政の各種支援については、計84.1%が利用していない、地域の各支援サービスは計80.5%が利用していないという回答結果になりました。(自由回答には、実際の行政の対応についてなど、様々な回答が届いています。)困っていても、必要な支援にたどり着く事、そして支援を受ける事は簡単ではない…ということも浮き彫りになりました。

⑤各種支援、それに伴う手続きについてなど、親御さんご自身のお考えを7問お聞きしました。

⑥最後の設問では、「こども宅食えんまる便」を利用する前と比較して、親御さんの気持ちの変化についてお聞きしました。「とてもあてはまる」と「あてはまる」の合計として、生活が楽になった80%、家族関係が良くなった75.5%、生活が前向きに考えれるようになった82.5%、地域や社会とのつながりが感じられるようになった80%。との回答をいただきました。自由回答でも支援者の方への感謝の声が多数あり、ご支援者のひとりひとりの皆さまと一緒に取り組んでいる「こども宅食えんまる便」の活動が、利用家庭の生活の前向きな変化として少しずつ確実に現れているのでは、と感じています。

合わせて、比較調査として大学生以下のお子さんを持つご夫婦に、以下の同じ内容の質問を1問おこないました。「過去3年間で、新型コロナウイルスの影響以外の経済的な理由で、こどものためにしてあげたかったのにあきらめたものがあったら教えてください」

実施期間:2022年5月

対象者:大学生以下の子どもを持つ夫婦

実施方法:Webアンケート

回答者数:依頼世帯35世帯中30世帯

『えんまる便利用家庭の回答』

『大学生以下の子どもを持つ夫婦の回答』





比較調査世帯の大学生以下の子どもを持つ夫婦では、あきらめたものとして、一番多い「旅行・レジャー」で20%、その他の項目では6.7%、0%となっています。一方えんまる便の利用世帯では、「旅行・レジャー」が80%、「塾などの学校以外の学習」を42.5%の世帯があきらめた事があり、「ない」と答えた方は10%でした。

比較調査世帯の「ない」73.3%と比べると、何かをあきらめた経験が「ある」と答えたひとり親家庭が約7倍になる計算になり、家庭の経済格差が子どもの経験、体験の機会格差にそのまま繋がっていることがわかります。

コロナの長期化は、特に保証のない非正規雇用の多いひとり親家庭のお母さんがとりわけ影響を受けています。収入が激減する、なくなるという恐れの中、日々の生活とこどもの命を背負っています。親御さんご本人や家族の病気対応や介護を同時に背負っている方も少なくありません。

新型コロナの影響からの回復にはこのようなひとり親家庭の対応が不可欠であり、「こども宅食えんまる便」では、今後も支援世帯数の増加、支援強化に向けて活動していきます。

合わせて、困っているご家庭が自分たちの生活のすぐ側にいて、そして支援のニーズがわかっていても、支援には簡単にはつながらない現状を踏まえ、

『なぜ支援が届かないのか?』

『なぜ、助けて…つらい…の声が届かないのか?』

『一方でなぜ支援を受けようと思わないのか?』

「こども宅食えんまる便」では、社会に存在する支援がつながりにくい様々な障壁をひとつひとつ取り除き、現実かつ具体的に支援につなぐ取り組みもおこないます。

引き続き、皆さまと一緒に社会課題解決の取り組みをおこなっていきたい考えていますので、皆さまおひとりおひとりのお力添えをなにとぞ宜しくお願いいたします。